火砕流岩盤から湧き出る大地の水、米に酒の生命を与え、酒質の土台となる。
産土の酒づくりの土台となるのは、和水町の大地と、そこから湧き出る水です。和水町のある菊池川流域の大地には、独自の地勢や、気候、生態系による地球の生命力の根源的な循環があり、土地を同じくする水からは稲が育ち、その一部は酒づくりの仕込みに使われます。
日本酒の成分中の約80%を占める水は、米とは異なる作用で味覚に静かなテクスチャーを与える重要な要素です。水道水よりも、成分の基準が厳しく設定されており、私たちが使っている水は、その基準をクリアした、僅かに感じるとろみを特徴とした、代々守り続けてきた井戸の水です。
私たちはその井戸水を、米の品種や状態、季節や温度、仕込みごとの特性に合わせて使っています。また蔵人全員で「井戸の水神」に手を合わせ、大地と水へ祈りを捧げる神事も欠かさず続けています。
創業の起源となった、かつては神社の井戸だったこの井戸の水には、世界一のカルデラ火山「阿蘇」との深い関わりのある、和水町独自の大地と水の物語があります。
The subterranean water flowing from the pyroclastic bedrock is the vitality of rice, the life of sake, and the source of quality sake.
The foundation of our ubusana sake brewing is the land of Nagomi-machi and its spring water. The Kikuchi River basin in which Nagomi-machi is located has its own geographical features, climate, and ecosystems found nowhere else.
These create a fundamental and dynamic cycle of the earth which supports life. Rice is grown with the water of the land. Some of this water is also used in the brewing process.
About 80% of sake is water and therefore a vitally important element in giving a settled feel to the palate. The water we use comes from a well that has been protected for generations. It is characterized by a hint of “thickness” and meets standards of strictness higher than those required of tap water.
We use this water taking into consideration the cultivar and condition of the rice, the season, the temperature, and all the small characteristics that make each brewing process different. At Hananoka, all brewers join hands to invoke the deity of the well. Prayers have long been offered to the earth and water. This well, which was once part of the grounds of a shrine where the company was founded, has its own unique ubusuna story deeply connected to earth and water, Nagomi-nachi and Mt. Aso, home of the world’s largest volcanic caldera.
大火砕流跡の上にある町「和水町」
岩盤をくりぬいて作られた酒蔵の井戸の底には、さらに地下深くへと続く、大きな土粒子による礫層があります。礫層の隙間を埋めているのは砂より細かな粘土質で、水を通しにくい性質を持つため、井戸底に水が溜められます。その上側には火砕流堆積物が凝固した約6mの岩盤層が地表近くまで続いています。和水町は古代の巨大噴火「阿蘇-4」火砕流跡の上にある町なのです。
和水町は世界有数のカルデラ火山「阿蘇」から約40キロ離れた、熊本県の北西部に位置した南北に長い町で、和仁川を含む3つの川が菊池川に流れ込んでいる地形です。阿蘇カルデラでは約27万年前から、4度にわたる大規模な火砕流噴火があり、その中でも約9万年前の「阿蘇-4」と呼ばれる火砕流大噴火は、九州の地形を変えるほど巨大なものでした。「阿蘇-4」のとてつもない量の火砕流が、40キロ以上も流れ出し、古代地層群が侵食されてできていた窪地に流れ込んで、現在の和水町の地形や、地下の火砕流岩盤と地下水が形成されたという特殊な成り立ちがあります。酒蔵の横を流れる和仁川の川底には、その火砕流堆積物の岩盤層が露出していて、いつでも見ることができます。
敬いと共に「水が合う」環境を守り続ける「水が合う」環境を守る
火砕流の受け皿となった窪地の”水を通しにくい粘土を含む礫層”の上に、火砕流堆積物が凝固した硬い岩盤層が形成されたこと、豊富な水量を持つ菊池川流域に隣接していたことで、和水町独自の水資源環境が育くまれてきました。大地と水の恩恵の中で、花の香酒造独自の日本酒が産み出されることに、私たちは日々感謝を続けています。そして2千年以上も前から菊池川流域で稲作が行われてきたように、水と米、水と酒造りとが文字通り「水が合う」環境を守り続けることが、なによりも大切なことと考えています。
大地と水の環境、それらが自然のまま健全であれば、米は最大の力を発揮して、最高の酒を醸し出してくれます。そのために肥料や開発工事等で土地や川、水資源を破壊しない農業と、自然環境保全の取り組みを、できるところから始めています。