産土の酒づくりと共にある「祈り」と「循環」を守る
産土の酒づくりには、時に目に見えない微生物の働きや、予想もしない出来事に対して、五感を駆使した科学を超えた直感や、祈りにも似た選択をもって携わらなければならない時があります。そのためには酒造りと自然、農業が共存する「共にある循環」の中に私たち自身もいるという意識や感性がとても重要になります。
私たちは今、産土の酒づくりの成り立ちとなる自然、虫や植物、すべての生きものたち、そこで暮らす人々と酒づくりがやさしく共存し、未来へと循環していくための、産土「生産風土づくり」と同時に、農耕儀礼や祭りなどの「祈りの文化の伝承と復活」に取り組んでいます。
全ての生命と先人たちに捧げられた土地独特の「祈り」の文化と、常に土着という原点へ還るための生態系と自然環境の健やかな「循環」を土地のみなさんと、そして花の香を愛していただくみなさんと共に守り続けていきます。
Preserving the “Prayers” and “Cycles” that are Inseparable from Ubusuna Sake Brewing
In the process of Ubusuna sake brewing, there are times when we must rely on all our senses to engage our intuition in ways that transcend science, relying as well on prayerful decisions regarding the unexpected events that are often involved in the workings of invisible microorganisms. It is essential to have an awareness and sensitivity that we ourselves are part of the “cycle of coexistence” where sake brewing, nature, and agriculture come together.
We are now taking the initiative towards the creation of a production climate in which the natural environment – insects, plants, and all other living creatures that form the basis of sake brewing, as well as the people who live here – can coexist in harmony and be part of a cycle that will continue far into the future. At the same time, we are working to protect and revive a culture of prayer. We will continue to preserve this culture of prayer-of-the land dedicated to all life, our ancestors, and health and well-being. We will also continue to promote the cycles of the ecosystems and natural environment so as to always return to our indigenous roots, together with the people of this land and with all who love Hananoka.
祈|いのり
全ての生き物と共生する産土のモノづくりは土地独特の「祈り」の文化と、常に土着という原点へ還る「循環」に支えられています。様々な生命がかかわり合う、私たちの酒づくりには、祈りという精神性と価値観の共有は欠かせません。長い時間をかけて受け継がれてきたものを、決して私達の世代で絶やしてはならないという思いから、土地伝承の農耕儀礼や神事、祭り、伝統文化を守る取り組みを土地のみなさんと一緒に続けています。消失した昔の農耕技術や農具、農耕儀礼なども研究し「馬耕作」「虫追い」などを復活させています。
還り|かえり 循環
「祈り」と同じように、目に見えにくい、しかし大切な産土の原点となるものがあります。土着という原点への「還り」であり、土着の環境を健全に守り続けるための「循環」です。私たちの酒蔵の前の川では、川の生き物たちが激減しています。陸の動物や鳥たちにとって必要だった森や里山も、人間のための竹林と植林された杉山が人口減少で放置されたことで、生態系の循環が壊れかけようとしています。おそらくこれは私たちだけの話ではないでしょう。産土の酒づくりは、人々の暮らしと多様な生命が酒づくりと共に豊かに循環し、健やかな自然環境で育まれた土地の恩恵をそのまま酒にすること。その使命を少しでも果たすために、生き物や自然を損なわないため無肥料といった大変手間のかかる自然農法の農作業を多くの援農パトナーの方々が手助けしてくれています。
土着の自然や生態系、川や景観を守り、健やかな循環を再生する活動は、常に土地の人々と、話し合いながら持続的に続けています。都会ではなく、山に挟まれ、田園と自然に囲まれた酒蔵だからこその当たり前の役割だと考えています。